ISBN:4102100121 文庫 潮社 ¥940

ぼくがヘミングウェイをはじめて読み始めたのが高校生の頃。読書感想文か何かのため,適当に書店で選んできたのがたまたま「日はまた昇る」だった。しかし、"学校教育の国語"嫌いのせい、あるいは、義務がすべての根源にあったと言わんばかりに反抗していたお年頃のせいもあって、100ページそこそこで放棄してしまった。

その後,少し本を読むようになったときには既にヘミングウェイの作品群のすべてについて「飽食時代のバナナ」という値札を貼り付け,二度と近寄るまいと自ら決めこんだ。

大分大人になった頃に「誰がために鐘は鳴る」を読んで,心が改まる思いをした後,この短編集(文庫では全3巻)を読み,つくづく感じた,「たまたま最初に読んだものがつまらなかったからと言ってある作家のすべてを見捨てるような姿勢はよくない」と。
この作家に限っては,次の作品次の作品と読み進むほどにおもしろくなるのだ。

とはいえ,1冊しか読んだことが無いにもかかわらずもう二度と読みたくない作家がぼくには結構いてしまう。2冊目を読んでも絶対面白いと思わない自信があったとしても読むべきなのだろうか。必ずしもそうは思わない。

人の精神は移ろい漂う部分があるものだから,何かについて常に普遍/不変なイメージや思いを抱き続けることは難しいが,同時に普遍/不変なものの上に成り立っているのがぼくなのだ。

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