ISBN:4309202578 単行本 柳瀬 尚紀 河出書房新社 1996/03 \2,243

寒い国は無条件で好きだ。古くてビールがうまければなお良し。

ジョイスの「ユリシーズ」を読んでダブリンに憧れたあなたがこの書を読むと、ダブリンが「遠のく」か「自分のものになったかのような錯覚を覚える」のいずれかの感を抱くに違いない。もし、「べつに何も思わない」ならばそれは前提がうそなのだ:つまり、あなたはジョイスの「ユリシーズ」を読んでダブリンには憧れなかったか、あるいは少しの想像力が足りなかったか、だ。

残念ながらこの書は「ユリシーズ」という別の書物を読んだ人に読者層が絞られているため、ある種排他的な感じがするのは否めない。しかし、順序は逆でも良い、この書物の中のアルファベット(原文)と親しみなれた文字列(翻訳)、そして幾つかの古い写真を同時並列的に感覚したあなたは、一見文字列の駄列とも思わしき「ユリシーズ」の断片断片を走査したくなるに違いないし、実際私はそうしたくてたまらない、いや、この足で。

コメント