老い憂い

朝7時代のバスに乗り，あたり一面死相で埋め尽くされているのを見てゲンナリ．老人の集団にぼくは慣れていない．決して老人が嫌いなわけではないが，朝っぱらから"どこそこ病院の若い医者の至らなさ”など大音量で聞きたい話題ではなく，またそれ以上に，サラリーマンの貴重な朝の時間にノロノロと周りを省みず乗車するだけでもイライラするのに，乗車直後に空いている席に突進する猛スピードには，イライラを超えて悲しみを覚える．

俺も老いるのか！！！
心ミゼラブルに老いるぐらいなら，幼稚なマインドに退行するぐらいなら，さっさと死にてーよ，ってかなりの頻度で思うけれど，老いとともに考えも老いてしまい，老いる前に考えたことなんか「あれは若い時の考え」と一蹴されてしまうのかもと思うといっそのこと有り金全部はたいて真剣にアリゾナ移住を考えたくもなる．タクラマカンでもシナイでもイイケドヨ！

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地元の古本屋をひやかしていたら，新手の「文章読本」を発見した．こんな大層なタイトルをしるすのはどこの大御所だと思いきや，ぼくの勉強不足か見ず知らずの御仁の名が．確か中上健次の近辺にあったから中○○○というおっさんだと思う．は〜んと偉そうにぱらぱらみていたら見覚えのある文章が出てきたので注意深く読み始めるとすぐに

「『燃え尽きた地図』は安部公房の作品の中でも最も推理小説に近い云々…ハードボイルドとはチャンドラーやマクドナルドに代表される云々」

投げ捨てたつもりで本を棚に返した．フィリップ・マーロウの世界は大好きだが，安部公房のそれとは似ても似つかない，それならむしろ「安部公房はカフカに似ている」というclicheを使ってくれた方が100倍良かったね．文章読本なんて100年はえーよ！と思うが，もし安部が三島や谷崎やましてや丸谷と同時代だったとしても彼らが安部公房を俎上に上げることは100％ありえなかったように思える(丸谷は同時代，か)．もちろん天国のヒデにも期待できないだろうな．そもそも安部公房の著作に対する批評の類すら，一部のドナルドキーンや一部の島田雅彦このご時世入手困難なのであるからして，である．

本当に読みたいもの/書きたいものが何であったのかが，無駄に読んだ/書いた後に判明することは結構多い．

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参照のダガー．
圕本の返却を忘れる．